………………。

 うがああああああああああ!!!!!!!
 10メートル前を行く、あっあの後ろ姿はあああああっっっ。
 間違いない! Uっちだ! 担当のUっちに違いない!
 ココから住まいまで一本道。このままでは間違いなくUっちが私より早く家についてしまう!
 ああ、人生最大のピンチがっ! こんなところで訪れようとはっっ! 助けて黒ヒゲ!
 きっと一緒の電車だったに違いない。車両が違ったのだ。じゃ、これはむしろ神に感謝なのか!? だがいくら神に感謝しても目の前のピンチは無くならないぃぃ!
 に、逃げたい。
 仕事してなかったのがばれる。Uっちは怖い。怖いのだ! 知られたくないのだ!
 だが理性がそれを押しとどめる。つーか逃げてどーするよ。きっとしばらく家の近くで待ってるぜ……。OH! NO! 神さま。でもそうだよな、Uっち原稿もぎ取る優秀な編集だもんな、とほほ。冷静な自分がチョットつらい。

 などということが、わずか二、三秒の間に頭の中を駆けめぐった。このピンチに今までの思い出が走馬燈のように脳裏を駆けめぐった……かどうかは覚えていない。
 とにかく、このままでは惨敗は必至だ。
 意を決した私はすっと息を吸って…………。

「あ〜Uさーん。すいません。今ご飯食べに外出してて。あーよかった途中で会えて〜」

 笑 顔 で言った。

 当たり前だ。笑顔で言った。
 やましいことを隠しているのだ! 他にどんな顔が出来るというのだ。
 (逆ギレ開き直り)

 くるりとふり返ったUっちは、多少いぶかしげな顔をしたものの、私が追いつくのを待ってくれ、一緒に残りの道を歩いてくれた。
 たしかに私の格好はおしゃれーではなく、ふらっとその辺に出かけた程度のものだ。荷物も小振りのリュックのみ。よかったよ。パンフレット買わなくて。
 とはいえ、内心、見抜かれているのではと冷や冷やした。しかし担当は私が外出していたことには「そうでしたか〜」だけで済ませてくれた。あまつさえ……なんか差し入れさえもらった気がする。
 ううう(泣)。見抜いてたかもしれないけど、黙っててくれてありがとうUっち。もしかしたら黙ってることで無言のプレッシャーだったのかもしれないけど…………。

 その後は、家に戻って、あらかじめ書いておいた分をプリントアウトして渡し、ノルマに足りない分はUっちが社に戻るまで必死でカチカチと打ってfaxで送った。
 ふう〜。
 こうして小説家は黒ヒゲ危機一髪を回避したのだった。
 ※良い子は真似しちゃいけないよ。

 ちなみに確か龍と魔法使いの4巻か5巻あたりのことです。もう6年前になるんだなあ。
 学習した最近の榎木は、もう事前に! この日は前からチケットとっていて、どーしても行きたいんですー。と泣きながら自己報告することにしました。ウソつくよりは、いい、気が、する……。んなことより、仕事は余裕持って……な。

 つづきのネタはそのうちにね。

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